福祉用具を使って、利用者さんとその家族の生活を楽しく快適にしたい―。そんな願いが発端となり、介助式車いすCOLORS(カラーズ)は生まれました。開発にかかわった4人の振り返りを通して、誕生までの道のりと、それぞれが大切にしていることを紹介します。
トークメンバー
発起人
田尻 久美子
株式会社カラーズ 代表取締役
大手通信系IT企業、大手在宅介護企業等を経て、2011年12月に株式会社カラーズ(東京都大田区)を設立。子どもから高齢者までが事業範囲。「多世代共生の地域づくり」を理念とし、地域活動や様々な団体との連携に力を入れている。介護支援専門員、介護福祉士、保育士。
発起人
飯沼 勉
株式会社カラーズ
福祉用具事業部
福祉用具専門相談員
大手バイク整備工場に14年勤務の後、事故現場での救助活動をきっかけに、「人の役に立つ仕事がしたい」と介護業界へ転身。福祉用具の活用や環境整備を通じて、その人らしい生活に寄与することを信念に働いている。
エンジニア
関 英一
有限会社 関鉄工所 代表取締役
70年続く機械装置や大型部品の製作会社。大田区の工業会では青年部の長を歴任した。工業の発展と共にものづくりの楽しさを伝えるべく異業種や商店街と組み、イベントを行なう。小学校等への出前授業も請負っている。大田区の町工場が舞台の下町ボブスレーにも携わっている。
デザイナー
宮田 尚幸
風と地と木合同会社 代表
デザイナーとして働いた後、デンマーク留学で北欧福祉哲学を体験し幼い頃からの生きづらさが解消される。日本窓口をしている杖工房「ヴィルヘルム・ハーツ」の事業が2022年グッドデザイン金賞を受賞。
"Design for Care"をコンセプトに、心理的安全のデザインに取り組んでいる。
車いすを使うのは病院やデイサービスに行くときだけで、 お出掛けする人は少ないんです。それって寂しいなって、ずっと思っていました。お散歩とかお花見とか、楽しい 場面でも気軽に使っていただきたいなと。
田尻:
やっと、私たちの想いが形になりましたね。
関:
ここまで長かったですよね。6年前でしたっけ?
田尻:
そうですね。介護現場で働く当社のスタッフと利用者さんの声を集めてみたら、福祉用具を使って利用者さんの生活の困りごとを解決するアイデアがたくさん出てきて。それをどうにかして形にしたいと思いました。そこで、関さんに相談したんですよ。 地元(東京都大田区)の商工会議所の若手経営者の会合で、初めて関さんにお会いしたとき、「何でもできますので、お気軽にご相談ください」と言ってくださったので、“課題表”を持って伺ったという。
関:
あのときは、まさか車いすを開発することになるとは、まったく想像していませんでした。ネジを一つ変えるくらいのことだろうなって(笑)。
田尻:
私たちも、何か一つでも課題を解決できたらいいなくらいの気持ちでした。車いすなんて、大それたことは考えていなくて(笑)。(エクセルのシートを見せながら)これです、あのとき関さんに見せた“課題表”!
飯沼:
懐かしいー。
田尻:
倒れない、もしくは倒れても戻ってくる杖とか、いろいろ。
田尻:
結構、危ないんですよね。落ちた杖を拾おうとして転倒し、顔面を打撲してしまったり。
関:
「こういう苦労をしている人たちがいるんです」と、田尻さんと飯沼さんにアツく語られて。
田尻:
そのなかで形になったのが、車いすだったんですよね。
飯沼:
搭乗者に主眼を置いて開発された車いすはたくさんありますが、操作する介助者に主眼を置いたものは、僕が知る限りほとんどなくて、介助者のニーズに応えられる市販の車いすが見つからなかったんです。
大田区には、歩道のための段差がない“かまぼこ型”の狭い道路が多く、水勾配で片流れするんです。それだけでなく、「段差を越えるのに苦労する」「踏切を渡るのが大変」という話もよく聞いています。
車いすの貸し出しをしても、使うのは病院やデイサービスに行くときだけで、お出掛けする人は少ないんです。それって寂しいなって、ずっと思っていました。お散歩とかお花見とか、楽しい場面でも気軽に使っていただきたいなと。